加藤巧《To Paint (heavy metal) #01》と《〈To Paint (heavy metal #01)〉を記述する》について
本作品では、《To Paint (heavy metal) #01》という平面作品を「蛍光X線による元素マッピング」によって元素のかたちづくるビットマップ画像に転化し、平面作品《〈To Paint (heavy metal #01)〉を記述する》の画面の構成要素として使用しました。
《〈To Paint (heavy metal #01)〉を記述する》はそのタイトルの通り、《To Paint (heavy metal) #01》を記述するという行為を「作品のキャプションでもあり平面作品でもある状態」にしたものですが、ここでは記述の方法や記録されている材料の情報を公開します。
《To Paint (heavy metal) #01》で使用されている材料は以下の通りです。
支持体
- 木製パネル(440×364mm)
- 亜麻布
- ウサギ膠
- 白亜
展色材と溶剤
- Paranoid B72
- アセトン
顔料
- チタニウムホワイト
- バフチタニウム
- シルバーホワイト
- 硫酸バリウム
- アイボリーブラック
- レッドオーカー
- バーミリオン
- カドミウムレッド
- アリザリンクリムゾン
- イミダゾロンオレンジ
- カドミウムオレンジ
- イエローオーカー
- オーレオリン
- 鉛・錫ー黄(ジャロリーノ)
- アースグリーン
- マラカイト
- カドミウムグリーン
- クロムオキサイドグリーン
- ビリジャン
- ウルトラマリン
- コバルトブルー
- フタロシアニンブルー
- ローアンバー
- 蛍光顔料(ピンク)
- 蛍光顔料(青)
- 蛍光顔料(緑)
- 蛍光顔料(レモンイエロー)
- 蛍光顔料(オレンジ)
- パールホワイト
- パールコパー
- パールゴールド
- 金粉
- 銀粉
- アルミ粉
- グラファイト
- 錫粉
《To Paint (heavy metal) #01》は、刷毛によって画面に描かれた痕跡に沿って、以上の顔料を置き直しながら描かれたものです。蛍光X 線による元素マッピングでは、比較的重い元素ー例えば水銀(Hg)、コバルト(Co)のようなものが検出されやすいため、なるべくどのパートをスキャンしても重い元素が混在するように顔料を選びながら描かれました。
中でも特に密集している場所をピックアップし、各100×100mm(スキャン可能な面積)で3ヶ所のスキャンを行い、元素を検出しました。
強く線的な要素として現れて見られたCo(コバルトブルー)、Hg(バーミリオン)、そして黄色味がかった被覆力の強い白系の混色として使用したSn(ジャロリーノ:鉛と鈴を含む)を組み合わせてRGB合成画像を作りました。
測定条件
- X線管電圧:50kV
- 管電流:1.00mA
- 照射径:Φ400μm
- 測定時間:1278s
①と同様、任意に元素を選んでいきました。特にくっきりと元素が見えるものを優先的に選択し、いくつかの組み合わせを試しながらRGB合成画像を決定していきました(右下)。B=青には、レッドオーカーなど土製顔料に含まれる鉄(Fe)が検出されるところを選択しています。
測定条件
- X線管電圧:50kV
- 管電流:1.00mA
- 照射径:Φ400μm
- 測定時間:2556s
カリウムは青色部分(ウルトラマリン)やパール顔料部分から多くの反応が見られました。カリウムは今回強く出る予想をしていなかった元素でした。結果的に、①~③全てのRGB合成画像においてG=緑にHg(水銀、バーミリオンに含まれる)を割り当てることとなりました。B=Pb(鉛、ジャロリーノなど)において、くっきりした線が見えているところと別にボヤっと見えているところは下塗り部分に使われたシルバーホワイト(鉛白)です。下地部分はランダムに鉛、硫酸バリウム、チタニウムホワイトで塗り分けられており、検出場所によってチタン(Ti)や鉛(Pb)が異なって検出されました。
測定条件
- X線管電圧:50kV
- 管電流:1.00mA
- 照射径:Φ400μm
- 測定時間:2556s
なお、作品《〈To Paint (heavy metal #01)〉を記述する》では、各場所のスペクトルを元に、カーボンによる手書きによってトレースしています。
- 使用機材:XGT-5200
- 協力:(株)堀場テクノサービス、久保田健司(エンジニア)
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